第32回ひと・健康・未来シンポジウム2025京都
「薬あるところに薬剤師あり -信頼できる薬剤師があなたのそばにいますか?-」
開催概要
2025年3月2日(日)13:00〜16:00
ホテルグランヴィア京都 5F 古今の間
以下の必要事項を入力の上、ホームページのお申込みフォームよりお申込みください。
お電話・FAXでも受け付けます。
<必要事項>お名前・ふりがな(複数の場合は全員分)・連絡先
担当理事
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京都薬科大学 名誉教授
公益財団法人ひと・健康・未来研究財団 副理事長
1947年大阪府生まれ。1969年京都大学薬学部卒業、1972年広島大学医学部薬学科助手として薬学創設に参画。1978年マサチューセッツ総合病院研究員、1979年京都大学医学部附属病院薬剤部助手に着任して業務・教育・研究に携わりその後の活動の原点になる。1990年東京医科歯科大学医学部附属病院教授・薬剤部長、1994年京都大学医学部附属病院教授・薬剤部長、2010年京都薬科大学学長。邂逅、多くの人々との巡り逢いに感謝しつつ、薬学・薬剤師の更なる社会貢献を願っている。
かかりつけのクリニックで診察を受け、手渡された処方箋を持って行きつけの薬局へ。詳しい説明をしてもらって薬を受け取り、ついでに普段から気になるサプリも買い求めて…。当たり前のように思っていた日常ですが、薬の安全性や流通について何かと話題になる昨今です。今一度、薬のプロとして社会から見た薬剤師の姿について考えてみたいと思います。
開催にあたって
医学・医療の進歩によって平均寿命が延び超高齢化が進む中で、安全・安心の持続可能な医療提供を目指して様々な改革が進められています。医薬分業の進展や6年制薬学教育などによって、薬の専門家としての薬剤師の役割は一層明確になってきました。患者に寄り添いながら、調剤のみならず、薬物療法への積極的な貢献が求められています。病院における医師・看護師などとの多職種連携は、安全性や医療費軽減の面から薬剤師に期待が寄せられ、また健康サポート薬局、かかりつけ薬局も制度化され進展しつつあります。今回は病院薬剤師、薬局薬剤師、そして患者の立場からご講演をいただき、パネルデスカッションを通して、薬のプロとして社会から見た薬剤師の姿について考えてみたいと思います。
講演内容
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神戸学院大学薬学部 教授
大阪市出身。1980年名城大学薬学専攻科修了、京大病院薬剤部勤務。京大薬学研究科講師兼務を経て2008年より神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部長、2011年院長補佐を兼務。同病院は神戸医療産業都市の医療クラスター・中核病院として機能し“市民の最後の砦”としての役割を果たしている。2021年より同病院臨床研究推進センター長、神戸学院大学薬学部教授として臨床研究・薬学教育の発展を目指している。
薬学は薬を創り世に送り出すだけでなく、それに反応する体の仕組みを明らかにし、病から健康に導くための様々な科学を統合した学問です。その薬学を修め、幅広い知識とスキルを身につけた薬剤師の活躍を紹介します。
薬学を修めた薬剤師は幅広い知識とそれを適用するスキルを身につけ、「健康」につながるあらゆる領域でその専門性を発揮できる、そんな可能性を秘めています。ロボットや人工知能(AI)の普及により、薬剤師の仕事が様変わりしつつありますが、それらに取って替わられるのではなく、より専門性を発揮できる領域でチャレンジする動きが起こっています。病院薬剤師が薬物治療において医師のタスクシフト/シェアの受け皿になる、具体的には医師と事前に作成・合意されたプロトコールに基づいて薬剤の選択や投与量を提案するといったことが進められています。また、これまでのお薬の説明に加えて、癌領域などでは医師の診察前に専門認定を受けた薬剤師が患者さんから副作用の症状などを聞き取って重症度を評価し、それに対応する指示療法を提案するといったいわゆる「薬剤師外来」が広まりつつあります。一方、健康に不安があり、できればもっと元気に暮らしたい、そんな思いに応える薬剤師も大切な存在です。深夜にテレビをつけると多くの健康関連商品の紹介が続きます。薬局やドラッグストアで薬剤師がその相談に乗ってくれたら、安心してより確かなものを手に取ることができるではないでしょうか。「未病」、「先制医療」といった考えのもと、社会全体の健康志向に薬剤師が応えることは、高騰する医療費の抑制にもつながります。気になることは、あなたの側にいる薬剤師に相談してみてください。
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株式会社うさぎや薬局 代表取締役
1990年摂南大学薬学部卒業。病院薬剤部、保険薬局勤務を経て、現在府内に保険薬局3店舗を経営。地域にて2018年より相楽薬剤師会会長として相楽災害マニュアルを作成、コロナ禍では自治体、医師会、保健所と連携しあらゆる面でのコロナ対応に尽力し、ワクチン集団接種の分注業務、新型コロナ感染者の処方・配送マニュアルを作成し円滑な流れを構築、2023年京都府薬剤師会常務理事、日本薬剤師会代議員として現在に至る。
地域の薬局には、薬剤師が常在しています。健康相談やお薬相談、疾病や予防について、災害に備えてなど、多岐にわたって相談できます。また病院、診療所、介護事業所や行政とも連携しています。お気軽に薬局に出向いて薬剤師に相談してください。
普段から何でも相談できる「かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師」をお持ちでしょうか。
「かかりつけ薬剤師」とは、薬による治療のこと、健康や介護に関することなどに豊富な知識と経験を持ち、患者さんや生活者のニーズに沿った相談に応じることができる薬剤師のことです。
かかりつけ薬剤師の主な仕事は、処方薬や市販薬などの服薬状況を把握し、薬の飲み残しや重複のチェック、注意を要する飲み合わせのチェック、副作用がないか、薬が効いているかなどを継続的に管理することです。場合により医師と連携し、より質の高い治療を提供できるように協力体制を整えています。
そして休日や夜間などの時間外であっても、在宅医療において急変時にも安心して療養生活を送れるよう、医師や看護師、ケアマネジャー、介護事業所、行政等と連携し、チームを組んで在宅での療養に適したサポート体制を整えています。
また、将来の変化に備え、将来受けたい医療やケアについて、元気なうちからかかりつけ薬剤師と意思決定の内容を具体的に話し合うことで、自分らしく生き抜くことができて、その思いをかかりつけ医師や医療・ケアチームと共有しています。
ぜひ、お住まいの近くにかかりつけ薬局を持っていただき、信頼できるかかりつけ薬剤師に、お気軽に相談してください。
当日の発表では、かかりつけ薬剤師の機能と具体例、その他の薬局薬剤師の仕事についてご紹介します。
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1965年大阪市生まれ。自らの患者体験から、患者の自立と主体的な医療への参加の必要性を痛感していた1991年11月COMLと出合う。活動趣旨に共感し、1992年2月にCOMLのスタッフとなり、相談、編集、渉外などを担当。2002年4月のNPO法人化と共に就任した専務理事兼事務局長を経て、2011年8月理事長に就任。著書『賢い患者』(岩波新書)。広島大学歯学部客員教授。ラジオNIKKEI「賢い患者になろう!」パーソナリティ。
医薬分業元年から50年。処方箋受取率は全国平均82%を超え、薬局は身近な存在になったにもかかわらず、薬剤師の専門性や役割を理解している患者は多くありません。期待できる存在になるための考えをお伝えします。
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML<コムル>は、患者の自立と主体的な医療への参加を目指して、1990年から活動を続けています。発足当時、約10%だった処方箋受取率もこの30数年で80%を超えるようになり、薬学教育も2006年から6年制がメインになっています。そのような大きな変化のなかで、患者から見た薬剤師像が大きく変化したかと言うと、残念ながらさほど大きく変わっていないというのが実感です。確かに、同じ「薬剤師」であっても、病院薬剤師と薬局薬剤師では患者から見える姿が異なるようになってきました。病院薬剤師は患者に“見える存在”になりつつあります。しかし、それでもなお、薬剤師の役割や存在をしっかりと理解、認知している患者は多いとは言えないのが現実です。
一方、薬局薬剤師は二極化しているように私は感じています。対人業務に力を入れ、地域に根差して在宅医療にも取り組む薬局が一部あるのに対し、いまだに薬局内に留まり調剤業務にほとんどを費やしている薬局が多くを占めていると感じるのです。改正された薬剤師法が施行された2014年から、薬剤師は「薬学的知見に基づく指導」が義務づけられました。しかし、その法改正の前後で薬局薬剤師が手に入れている情報は何一つ変わっていないのです。
2019年の薬機法の改正と共に、服薬期間のフォローアップをすることが薬剤師法に加えられました。私はこれが患者の薬剤師を見る目が変わる大きなチャンスとして期待しています。これまでバックヤードでおこなわれていた薬剤師の大切な役割を見える化して患者に伝え、薬剤師の必要性を患者が理解し、「なくてはならない存在」としての認知を得る最後のチャンスではないかと思っています。
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製薬企業、大学病院薬剤部を経て、大学教員となる。2008年より2019年に定年退職するまで慶應義塾大学薬学部教授、2015年には慶應義塾大学病院薬剤部長を兼務した。現在は慶應義塾大学名誉教授、国際医学情報センター顧問、住友ファーマ社外監査役、日本薬系学会連合副会長、日本薬局学会副理事長などを務める。2020年より3年間、日本学術会議副会長。
薬局が地域の健康相談を担っていた時代から、医薬分業が進み処方箋を持たないと入れない薬局へと変貌し、調剤薬以外の相談が難しくなって久しくなります。私は、健康維持増進と医療の入口として、薬局が果たすべき役割は大きいと長い間思い続けてきました。今回、病院及び薬局のトップランナーの薬剤師のご講演と患者代表の演者も含めた討論から、薬剤師の現在を知り、皆様とともに薬剤師の上手な活用法を見出せることを期待しております。